バレーボールSVリーグの埼玉上尾メディックスはミドルブロッカー・権田寛奈を今季の主将に任命した。

「ゴンの流されない強さに期待しているんです」
大久保茂和監督は、新主将・権田寛奈の指名理由をそう話した。スタッフや選手とも相談して決定したという。
「どこから話そうか」
大久保は、話の順番を少し考えながら、まずはチームが育てたい人材から説明を始めた。
「『愛し愛されるメディックス』になるために、どんな選手をこのチームで育てたいのか、ということからお話ししましょうか。私は誰か一人、カリスマ的なリーダーがいるチームではなくて、みんながリーダーシップを発揮できるチームづくりを目指しています」
■流されない強さ

権田との時間は、これで5年目になるという。
「歴代、キャラの濃いミドルが何人もいてね」
大久保は少し笑みを漏らしながら話す。
現在所属する選手だけでなく、青柳京古、蓑輪幸、鈴木日葵、栗栖明歩など、歴代の選手の名前を挙げながら大久保は言葉を繋いだ。
「そんな中で…例えば、年長者が強く意見を出しても、権田は流されないんです。意見の強そうな側につくのではなく、時間をかけて、ゆっくりなんですけど自分の意見を絞り出せる。そこがゴンの強さなんです」
その良さが消えなかったのは、歴代の主将の力も大きいと大久保は言う。
「スバル(佐藤優花)、内瀬戸真実、キラ(山岸あかね)。彼女たちが権田に気を配り、スポットライトを当て続けてくれたから、彼女もここまで続けてこられたと思います」
大久保は続ける。
「世間一般的に言われる、チームをガツンと引っ張るキャプテンではないかもしれない。でも、役職とか年齢とか、得点の多さで人を判断しない。
一人ひとりに耳を傾けて、ちゃんと聞ける。自分ひとりが頑張るんじゃなくて、それぞれの良い部分を見る。
意見が分かれた時も、自分がやりやすい方に流すのではなく、AとBが出たらみんなでCを目指していこうと言える。
むろん時にはAでもBでもいい。みんながリーダーシップを発揮できる組織にしたいと思った時に、ゴンが適任だと考えたんです」
副キャプテンの鎌田咲希と山地梨菜は、権田の希望を踏まえて選んだ。
「咲希は視野が広くて、年齢に関係なくみんなをつないでくれる。梨菜は、権田が何でも話せる相手。価値観が似ているのかもしれませんね」
■変わらず、貫く

9月26日、鴻巣市立総合体育館。Astemoリヴァーレ茨城とのプレシーズンマッチはフルセットの末、2-3で敗れた。
主将として初めて試合後会見の場に立った権田は、負けを認めたうえで、今週のテーマだったコネクションとコミュニケーションの手応えを語った。
「みんながコミュニケーションを取りながら、つながりを大事にしてくれた。苦しい状況でも、6人全員が手を取る感じでできたと思います」
主将を打診された当初は、不安があった。
「これまで主将を務めたことがなくて。でも全員がリーダーシップを取れるっていうのを目標にしているので、自分も周囲に助けてもらえれば、と。
自分は誰とでも話すことができるので、いろんな人から意見を聞いて、それをしっかり言葉にできるように頑張っていきたいですね」
立場が変わることで見え方やプレーが変わるのでは、という懸念もあった。相談した周囲から返ってきたのは
「何も気にしなくていい。ゴンが今までやってきたことを、キャプテンになっても変わらずやっていけば大丈夫」
という言葉だった。
「プレーで引っ張らなきゃ、という頭にはあまりならずに、今までやってきたことを貫けたらいいと考えています」
■「世界一速い攻撃」を目指す中で

この試合の中で権田は力強いスパイクを何本か決めた。
プレーヤーとしての今季の目標は、チームが掲げる「世界一速い攻撃」にミドルとして参加することだ。
昨季はブロックでの貢献が多かった。今季はそこに攻撃力を上積みし、スピーディーな攻撃でチームを助けたいという。
「夏場を通して、サイドのスピードは昨季より明らかに上がっていると感じています。ミドルではナナさん(井上奈々朱)が、上尾の中で一番速い。
その入り方を目標に、相手のブロックを1枚使わせ、サイドにつなげたいですね」
流されず、流さない。普段通りの権田寛奈が今季のメディックスを支えるだろう。
堀江丈