バレーボールSVリーグに所属する埼玉上尾メディックスがホームで開幕戦を迎える。

そこに先立って、9月26日にはプレーシーズンマッチが行われた。鴻巣市立総合体育館でAstemoリヴァーレ茨城と対戦し、結果はフルセットの敗戦となった。
新主将の権田寛奈は言う。
「苦しかった時でも、6人全員が手を取る感じでできたんじゃないか」
隣に座った井城青空(いしろそら)も言葉を続ける。
「自分がうまくいかない時間も多かったんですけど、そういう時でもチームのつながりをすごく感じました。だから次に切り替えたり、周りの人が良くなるようなプレーをしようと心がけてコートに立つことができました」
井城は2年目のオポジット。大阪国際大在学中に入団し、内定年も含めればこれで3季目となる。

黒後愛の海外移籍で、今季の井城は間違いなく出場が増える。だが、チームの重要なピースになりますね、という問いにも、気負いは見せなかった。
「ロイさん(黒後愛)が抜けたから、と変に気負わずに、自分ができること、役割を明確にしてコートに立ちたい。ディフェンスでもオフェンスでも、安定が大事になる。今日は自分のオフェンスに納得がいかなかった。その分、サーブレシーブで貢献したり、カバーで声をかけた。それは自分でもできる部分だと思う」
▪️スピードバレーのなかで浮上する井上奈々朱

今季のメディックスが取り組むのはスピードバレーだ。
チームは「世界で一番速い攻撃」を目指すという。
「サイドのスピードは向上している」
と権田は手応えを話す。
自身、ミドルブロッカーとしてそのスピード化に貢献したいという。
その基準となる選手を権田が口にした。名前が挙がったのは井上奈々朱だった。
「ミドルではナナさんが、上尾の中で一番速いです。あのくらいのスピード感を持って入って、相手のブロックを1枚つかせて、サイドに持っていけたらいい」
井上は1989年生まれの37歳。女子の世界では大ベテランと言えるであろう。
下北沢成徳高校からデンソー、日立(現Astemo)、東レを渡り、2024年に一度引退したあと、上尾で現役に復帰した。
今は活動を停止した「四国Eighty 8 Queen」でのプレー経験もある。
同じ1989年生まれのセッター岩崎こよみとのコンビは、今季のメディックスの攻撃の基準となりうる。
▪️金田修佳からの学び

井城もまた、スピードのある攻撃が好きだという。
上尾がスピードバレーに挑戦するのは彼女にとってもモチベーションアップに繋がる。
とはいえ、ラリーが続いたりパスが崩れたりすると、呼び方や入る場所はセッターとのコミュニケーションなしには決まらない。そこはやりながら掴みたい、という。
このバレーの構築に当たり、サイドの要となるのが、今季加入の金田修佳だ。
金田もまた一度は現役を退いた選手だった。以前は岡山シーガルズのエースとして活躍した、日本屈指の技巧派である。
このプレシーズンマッチでメディックスとしてのプレーを初めて見た観客も多いだろう。記者もその一人だ。
大久保茂和ヘッドコーチは、仕上がりをこう見た。
「調子はいい。引退前のハイパフォーマンスかと言えば、自分自身はまだまだ、というかもしれないが。しかし随所に、上手い決め方が出ているし、みんなに時間を与えるようなパスもある。金田を通じて我々もシーガルズのバレーを吸収させてもらっているようなところがありますね」
井城にとっても金田はお手本になる選手だ。
練習から学ぶことだらけだと言う。
「自分なら100か0で打つ場面を、金田は力を抜いたショットやコントロールに分けている。ブロックを使った攻撃もある。打つ以外の技を、真似して身につけたい」
▪️新戦力との融合、第3のセッター小山明の台頭

そのサイドに、もう1人注目の新加入選手がいる。タイ代表のチャッチュオン・モクシーだ。PFU、ヴィクトリーナ姫路を経て今季加入したアウトサイドヒッターで、この日はまだチームに帯同していなかった。
女子アジア選手権で日本と中国を破って優勝したタイ代表の主軸アウトサイドヒッターである。
すでに日本でもおなじみの選手だろう。
これまでのメディックスに金田とチャッチュオンがどう化学反応を起こすのか、実に興味深い。
セッター陣には岩崎こよみ、副主将の鎌田咲希に加え、井城と同期の小山明が加わってくるであろう。
高校は井上と同じく下北沢成徳で伝統のハイボール、ハイセットが中心だった。
この1年でクイックを含む速い攻撃は上達した、と大久保は見る。期待は、その思い切りの良さにある。
「ファイティングスピリットがある。すぐ熱くなるし、負けず嫌いが出る。良さでもあり、課題でもある。セッターが熱くなりすぎると周りが見えなくなる。アタッカーとのコネクションでは、自分の感情を扱うのに慣れてほしい。でも若いからと遠慮はしていない」
終盤の接戦でもクイックを使い、バックアタックを持ってくる。岩崎や鎌田咲希も、その大胆さを口にしていたという。
女子はレギュラーシーズンの試合数が昨年の44試合から38試合に緩和された。
その中で埼玉上尾メディックスがこれまで同様にターンオーバーを使ってくるかどうか、これは開幕してみるまで分からない。しかし、小山を含め多くの選手にチャンスがあるのが埼玉上尾の良さでもある。
金田、チャッチュオン、小山も含め、チームスタンスを明確にした埼玉上尾が今季何を見せるのか楽しみだ。
撮影 堀江丈